新人くん!そこのスラブの鉄筋、全部縛っといてくれよ~。
は、はい分かりました~。
クルクルクルッ、キュッ…
あ、難しいけど楽しい~。
↓↓↓半年後
クルクルッ…
うわ…こんなに結束あんのか…だるっ!
1級鉄筋施工技能士として、約15年以上鉄筋工をしている
とも丸*です。
みなさん、【鉄筋の結束】ってご存知でしょうか?
これから家を建てる人、建てた人は、住宅の基礎などに使われる鉄筋のことなら聞いたことあるかもしれませんね。
でも、【鉄筋の結束】は普通の生活を送る中では、見たことや耳にすることすら、全くないのではないかと思います。
そこで今回は、鉄筋屋(鉄筋工)をする上で必須となる技術、鉄筋の結束について実際の画像なども用いて、紹介していきたいと思います。
鉄筋の結束とは?
結束
みなさんの身近にある、住宅の基礎、マンション、ビル、橋、トンネルなどの多く建物や構造物には、鉄筋コンクリートでできている物がほとんどです。
その鉄筋コンクリートの、コンクリートの中には、鉄筋が格子状に複雑な形に組み立てられ、建物や構造物の人間でいうところの骨格となっています。
この建物の原型ともいえる鉄筋を、複雑な形に組み上げるために、鉄筋を配筋(所定の位置に鉄筋を配る)し、鉄筋同士をハッカーと呼ばれる道具を使い、結束線(専用のはりがね)で縛りつけ固定することを鉄筋の結束と呼びます。
・ハッカー
・結束線(メッキ加工ver.)
結束の重要性
建物の骨格となる鉄筋は、
指定された形に組み立て、コンクリートで、周りを固めるまでの間、その形を維持しなければいけませんが、ただ鉄筋を並べたり立てたりしただけでは、コンクリートで固めるまでの間に動いてしまい、指定された形を保つことができません。
そこで、鉄筋同士を結束線で結束することによって、その形は固定され、
コンクリートの中に入るまでの間、鉄筋は指定された形を維持することができます。
「ん?固定するなら溶接すればイイんじゃない?」と思われるかもしれませんが、
鉄筋は溶接により、部分的に熱が加わると材質が変化し、強度が低下してしまうため原則として鉄筋は溶接してはいけないことになっています。(溶接をしていい場合には溶接の長さなどの厳格なルールがあります。)
そのため、鉄筋を固定するための結束は鉄筋工事を行ううえで、組み立てた形を維持するための、とても重要で、必須の技術になります。
結束のやり方。
ではここから、鉄筋の結束のやり方を画像を用いて紹介していきます。
最初は簡単にはできないとは思いますが(僕も最初はうまくできなかったw)、慣れててくれば、一箇所あたり1~2秒で結束できるようになります。
①持ち方
まずは、利き手にハッカー、利き手じゃない方に結束線の束を下の画像のように持ちます。(赤字はこのあとの説明に使う部位名称。)
②結束線をつまみ出す
ハッカーを持った手で、結束線の束から結束線の頭を掴み、1本つまみ出します。
③結束線を鉄筋の交差部の裏にくぐらせる
つまみ出した結束線を、交差した鉄筋の裏にくぐらせます。
④ハッカーで結束線を引っ掛ける
くぐらせた結束線の頭をハッカーで引っ掛け、少し手前に引き出します。
⑤結束線のヒゲをハッカーに引っ掛ける
結束線のヒゲの部分を、ハッカーに引っ掛け折り返します。
⑥ハッカーを回し締め付ける
ハッカーに引っ掛け、折り返したヒゲの部分は指でつまみ固定した状態で、ハッカーを時計回りに2~3回ほど回転させ、締付けます。(引き出した頭の長さによっては回転数を増やす。)
締め付け過ぎると結束線が切れてしまうので、締め付けの具合は慣れるしかないです。
⑦結束完了
締め付けが終わったら、ヒゲの部分がコンクリートから出ない方向に調整して、完了となります。
お疲れ様でした~。
⑧おまけ
おまけとして、一部ですが結束の種類を紹介しておきます。
・タスキ掛け(クロス)結束
結束完了後、もう一度同じ鉄筋の交差部の裏に、一回目とは違う方向から結束線をくぐらせ、×になるように結束をする事をタスキ掛け結束といいます。
こちらも、結束の強度を上げることができます。
・互い違い結束(全体でタスキ掛け結束)
となり同士の結束を、お互い違う方向から行うことにより全体的にタスキ掛け状態にし、全体が強固に固定される結束。
・下がらない結束
壁などの部分の組み立ての際、交差する鉄筋の一方に、結束線を一周巻きつけ吊り下げるようにし、下がる事を防ぐ結束。
(一方方向に掛かる力に対して強くなる結束。)
まとめ。
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鉄筋同士を結束線で縛り、固定することを鉄筋の結束という。
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基本的に溶接のできない鉄筋の工事には、結束という技術が必要不可欠。
今回紹介した鉄筋の結束は手動で行いますが、最近では鉄筋結束機と呼ばれる性能のいい機械も開発され普及してきています。
しかし、複雑な形状の鉄筋組み立て作業では、まだまだ機械ではできない箇所も多くあり、手動で行う結束の技術は必要不可欠となっているのが現状です。
なのでこれからも、みなさんの身近で、鉄筋屋さんが鉄筋の結束をしていると思うので、機会があれば少しだけ観察して見てください。
(あんまりずーっと見られると恥ずかしいですが…)
おしまい。
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