1級鉄筋施工技能士のとも丸*です。
木造住宅などの建築物は、柱、梁、壁、屋根などの複数の部材を組み合わせ合体させることで建物としての形を作り上げています。
これはマンションやビルなどの、鉄筋コンクリート構造でできた建築物でも同じで、各部材を合体さることにより建物としての形を維持しています。
この柱や梁などの、違う部材同士を合体させ固定する時に重要になってくるのが「鉄筋の定着」になります。
今回は、そんな「鉄筋の定着」について、その重要性や定着の長さなどを解説していきます。
鉄筋の定着
鉄筋の定着とは、鉄筋がコンクリートから抜け出さないようにある程度の長さ埋め込むことです。
実際の建築現場では、この鉄筋の定着を部材(梁や柱など)からもう一方の部材へ行うことにより部材同士を合体させています。
このコンクリートの中に埋め込む、ある程度の長さの事を「鉄筋の定着長さ」といいます。
鉄筋の定着長さの事を「のみ込み」と呼ぶこともあります。
鉄筋の定着長さ
鉄筋の定着長さは、鉄筋の継ぎ手と同様に、コンクリートの設計基準強度と鉄筋径数(d)、鉄筋の材質(SD)によって決められています。
定着長さは、コンクリートの設計基準強度が大きいほど短くてなり、鉄筋の材質が高強度になるほど長く必要になってきます。
なお、鉄筋の定着長さは、直線の場合は「L2」フック付きの場合は「L2h」と呼びます。
直線定着の長さ
直線定着の長さL2(小梁・スラブの下端筋以外)
コンクリートの設計基準強度(N/m㎡) | SD295A・SD295B | SD345 | SD390 | SD490 |
18 | 40d | 40d | ー | ー |
21 | 35d | 35d | 40d | ー |
24~27 | 30d | 35d | 40d | 45d |
30~36 | 30d | 30d | 35d | 40d |
39~45 | 25d | 30d | 35d | 40d |
48~60 | 25d | 25d | 30d | 35d |
※d=鉄筋径
例:コンクリート強度が21N/m㎡で鉄筋材質SD295A鉄筋径D19の場合。
上表から、鉄筋の定着長さはL2=35dとなることから、L2=35×19=665となり、665mmの定着長さが必要となります。
フック付き定着長さ
フック付きの定着長さL2h(小梁・スラブの下端筋以外)
コンクリートの設計基準強度(N/m㎡) | SD295A・SD295B | SD345 | SD390 | SD490 |
18 | 30d | 30d | ー | ー |
21 | 25d | 25d | 30d | ー |
24~27 | 20d | 25d | 30d | 35d |
30~36 | 20d | 20d | 25d | 30d |
39~45 | 15d | 20d | 25d | 30d |
48~60 | 15d | 15d | 20d | 25d |
※d=鉄筋径
※フック付き定着長さは、定着起点から折り曲げ開始点までの長さになります。
L2やL2hを確保できない場合
例えば、梁の主筋を柱に定着する場合、柱の大きさによっては上記の定着長さ(L2やL2h)を確保できない場合がでてきます。
そんな場合は、柱の大きさ(柱せい)の1/2を超える位置で鉄筋を90°に折り曲げ、定着起点から鉄筋の先端までの全長で、直線長さL2を確保すればよいとされています。
小梁・スラブ(床)の下端筋の定着長さ
小梁やスラブの下の部分に使われる鉄筋の定着長さは「L3」と呼ばれています。
小梁・スラブの下端筋の定着長さL3・L3h
コンクリートの設計基準強度(N/m㎡) | 鉄筋の種類 | 小梁下端筋 | スラブ下端筋 |
18~60 | SD295A SD295B SD345 SD390 | 直線20d
フック付き10d |
10dかつ150mm以上 |
※d=鉄筋経
※耐圧スラブの下端筋の定着長さは、一般定着のL2となります。
この様に決められた長さを確保することにより各部材同士を強固に合体させることができます。
鉄筋の定着の重要性
「鉄筋の定着」が、なぜ鉄筋コンクリート構造の建物を作る上で重要なのかというと、
もし上記で紹介した「鉄筋の定着長さ」を確保できていないとなると、せっかく合体させた各部材は、地震などの外的衝撃や、老朽化によって簡単に分離崩壊してしまいます。
そのため、決められた十分な長さの鉄筋をコンクリートに定着させることが、とても重要になってきます。
「鉄筋の定着長さ」は鉄筋の「かぶり」「継ぎ手長さ」「間隔」と同様に、検査項目となっており、厳しくチェックもされます。
簡単に壊れるような建物を造られては困りますから当然です。
また上記の「鉄筋の定着長さ」は基本的な数値で、建築現場ごとの図面によってさらに細かく指定されているので事前の確認と周知することがが大切になってきます。
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