宅建業法⑥「保証協会制度」【宅建独学コース】

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宅建業法①~

宅建業に関する取引で、お客さんに万が一の損害が発生した時に備えた営業保証金制度」。

しかし、営業保証金は非常に高額なので、宅建業をはじめようとする者は、事前に多額の資金を用意しなければなりません。

そこで、同じようにお客さんの救済ができ、宅建業者の負担を軽くするために「保証協会制度」という制度が用意されています。

 

「保証協会制度」の概要

宅建業者が業務を開始するには「営業保証金の供託」が必要です。

※営業保証金制度については→こちらの記事

しかし、営業保証金の供託には、高額な供託金がいるため、宅建業者の負担が大きくなり、宅建業を始めたくても資金の少ない個人などには、厳しいものとなっています。

そこで、資金の少ない個人でも少額の資金で宅建業を始められるようにが用意されたのが「保証協会制度」です

 

この「保証協会制度」により、宅建業者は、保証協会加入し、社員となることで、「営業保証金の供託」が免除され、宅建業の業務を開始することができます。

 

つまり、宅建業の業務を開始するには、「営業保証金の供託」か「保証協会の社員になる」かの2択で選べるってことだね。

業務開始選択・とも丸*

 

 

保証協会とは

保証協会とは、国土交通大臣の指定を受けた一般社団法人で、宅建業者のみが社員になることができる団体となっています。

保証協会の業務

保証協会は、主に必須業務(義務)として、社員との宅建業に関する取引をした者に対する「弁済業務を行っています。

その他にも、宅建士などの宅建業の従事者に対する「研修」や、社員にかかる「苦情の解決」を必須業務として行っています。

 

必須業務(義務付けられた業務)

  • 弁済業務※これがメイン業務
  • 研修
  • 苦情の解決

この他にも、任意の業務がありますが、上記の3つが義務で、その他が任意と覚えましょう。

 

社員の加入

宅建業者が保証協会に加入することを「保証協会の社員になる」といいます。

保証協会は、現在、保証協会には「①全国宅地建物取引業保証協会」と「②不動産保証協会」の2つの団体がありますが、1つの保証協会の社員である宅建業者は、他の保証協会の社員になることはできません。

また、保証協会は、新たに社員が加入し、または社員がその地位を失った時には、直ちに、その社員の免許権者に報告しなければいけません。

※免許権者……免許を受けた都道県知事、国土交通大臣

 

ちなみに、2つの保証協会の簡単な見分け方として、①は「ハト」のマークで、②は「ウサギ」のマークとなっています。

加入の手続き

保証協会の社員になろうとする宅建業者は、保証協会に加入しようとする日までに、弁済業務保証分担金(分担金)を納付しなければいけません。

また、分担金の納付を受けた保証協会は、これと同額を弁済業務保証金として供託所に供託します。

保証協会加入の流れ・とも丸*

なお、分担金の納付時期は、新規加入の場合と、事務所(支店)増設による追加分の場合で異なります。

新規加入時 加入しようとする日までに分担金を納付
事務所増設時 増設の日から2周間以内に分担金を納付

 

分担金の額

分担金の額は、

  • 主たる事務所(本店)が60万円
  • 従たる事務所(支店)1ヶ所につき30万円

となっています。

例えば、本店と支店3ヶ所で営業する宅建業者の場合

60万円+30万円×3=150万円

※なお、分担金は有価証券での納付はできません。金銭のみです

営業保証金との比較

主たる事務所(本店) 従たる事務所(支店)1ヶ所につき
営業保証金 1000万円 500万円
分担金 60万円 30万円

分担金なら、営業保証金の100分の6でいいんだね。

 

弁済業務保証金の供託

保証協会は、社員から納付を受けた分担金と同額を、納付を受けた日から1周間以内に、供託所に弁済業務保証金として供託します。

保証協会が行う、この弁済業務保証金の供託については、金銭だけでなく、有価証券を用いることができます。

そして、保証協会は、弁済業務保証金を供託した時は、その旨を、その社員の免許権者に届け出なければいけません。

ちなみに、保証協会が供託する供託所は、東京法務局に限定されています。

 

弁済業務保証金の還付

保証協会制度02

営業保証金の場合と同様に、宅建業に関する取引で損害を受けた者は、弁済業務保証金から、還付(弁済)を受けることができます

※営業保証金制度については→こちらの記事

 

また、還付を受けることのできる債権も、営業保証金と同じで、社員が社員になる前(営業保証金で業務をしていた時)の取引によって生じた債権についても、還付の対象になります。

※債権(債権)……相手方に特定の行為をさせる権利。

 

しかし、「弁済業務保証金の還付」は、「営業保証金の還付」と手続きに違いがあります。

還付の手続き

宅建業に関する取引で損害を被った者(債権者)は、その債権について還付(弁済)を受けることができます。

還付を受けようとする者は、営業保証金の場合と違い還付(弁済)を受ける額について保証協会の認証を受けなければいけません

そして、保証協会に認証された後、供託所還付請求をすることで、供託所から還付を受け取ることができます。

 

還付額

債権者が受け取ることのできる還付額は、取引をした宅建業者が、保証協会の社員でなかった場合に、供託しているはずの営業保証金の額に相当する範囲内になります。

 

例えば、本店と支店3つで営業している宅建業者(保証協会社員)の場合。

分担金は、60万+30万×3=150万円となりますが

これを、債権者が還付を受ける場合には、分担金の額を、営業保証金だった場合の供託額に置き換えます。

上記分担金が営業保証金だった場合は

1000万+500万×3=2500万円

そして、この2500万円が債権者が受け取れる還付額限度となります。

※営業保証金の供託額については→こちらの記事

 

保証協会制度でも、還付請求をするのは供託所に対してな点に注意

 

還付充当金の納付

債権者に対して還付が行われると、供託所の弁済業務保証金に不足が生じます

この弁済業務保証金に不足が生じた場合、その不足額は保証協会が、先に供託所に供託しその後、社員(宅建業者)が保証協会に不足額を納付するという流れで補充されます。

この社員が保証協会に対して、不足額を納付することを、「還付充当金の納付」といいます。

※不足額とは……実際の還付額に相当する額。

例えば、2000万円の還付があれば、2000万の還付充当金が必要となります。

 

【還付充当金納付の流れ】

  1. 認証:保証協会に、還付対象の債権があることを認めてもらう。
  2. 還付請求:債権者が供託所へ還付の請求をする。
  3. 還付実行:供託所から債権者に還付が行われます。
  4. 国土交通大臣に通知:供託所が国土交通大臣に、還付した旨を通知する。
  5. 保証協会に通知:国土交通大臣が保証協会に、還付された旨を通知する。
  6. 不足額を供託:保証協会が、通知を受けた日から2週間以内に供託所に供託。
  7. 社員に通知:保証協会が社員に、還付充当金の納付すべき旨を通知。
  8. 還付充当金の納付:社員が保証協会に、通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付。

還付充当金の流れ・とも丸*

 

なお、宅建業者は、通知を受けた日から2週間以内に、還付充当金の納付がない場合、保証協会をクビになります(社員の地位を失う)。

 

社員の地位を失った場合

宅建業者は、以下の①か②のどちらかの事由により、保証協会をクビ(社員の地位を失った)になった場合、社員の地位を失った日から、1週間以内営業保証金供託しなければいけません。

①新たに事務所を設置した日から2週間以内に分担金を納付しない場合。
②還付充当金を、納付すべき旨の通知を受けた日から2週間以内に納付しない場合。
また、営業保証金を供託した時は、その旨を免許権者に届け出なければいけません。

なお、一週間以内に供託しない場合は、業務停止処分もしくは、免許取消処分を受ける場合があります

処分が確定ではない点に注意です。

 

弁済業務保証金の取戻し

分担金を納付した宅建業者は、保証協会の地位を失った場合などに、分担金の返還を求めることができます。

そして、その分担金の返還を行うに、保証協会供託所から弁済業務保証金取戻します。

これを「弁済業務保証金の取戻し」といいます。

 

また、この「取戻し」を行うには、「公告」が必要な場合と、不要な場合があります。

※公告……ある事項を広く一般に知らせること

「弁済業務保証金の取戻し」の公告は、保証協会が行います。

 

公告が必要な取戻し

・社員が社員の地位を失った場合

保証協会は、社員が社員の地位を失った場合、還付請求権を持つ者(債権者)に対して、6ヶ月以上の一定期間内に、還付を申し出るべき旨を公告をしなければいけません。

そして、その期間内に申し出がない場合に、弁済業務保証金を取戻すことができます。

公告が不要な取戻し

・一部の事務所を廃止した場合

保証協会は、社員が一部の事務所を廃止したため、分担金の額が、法定額を超える場合、その超えた額に相当する弁済業務保証金を、公告なしで取り戻すことができます。

 

準備金と特別分担金

保証協会制度03

弁済業務保証金準備金

保証協会は、債権者の還付によって、不足額を供託する場合に、その社員から還付充当金の納付がなかった時に備えて弁済業務保証金準備金(準備金)を積立なければいけないことになっています。

特別弁済業務保証金分担金

保証協会は、不足額を供託する場合に、準備金を充てるだけでは足りない場合には、全ての社員に対して、特別弁済業務保証金分担金(特別分担金)を納付するように通知しなければいけません。

また、通知を受けた社員は、通知を受けた日から1ヶ月以内、通知された特別分担金を保証協会に納付しなければいけません。

納付しない場合は、社員の地位を失います。

「保証協会制度」まとめ

・「営業保証金の供託」の代わりに「保証協会の社員」になることで宅建業の業務を開始できる。

・社員になるための、分担金の納付は、加入しようとする日まで

・分担金納付後、保証協会が、1週間以内に弁済業務保証金を供託所に供託

 

営業保証金と分担金の違い

営業保証金 分担金
主たる事務所(本店) 1000万円 60万円
従たる事務所(支店) 500万円 30万円
供託物/納付物 金銭または有価証券 金銭のみ
事務所(支店)増設から、

業務開始まで

供託→その旨を免許権者に届出後、業務開始。 増設の日から2週間以内に納付後、業務開始。

 

・還付の対象は、営業保証金と同じ。

・債権者は、保証協会の認証後供託所に還付請求。

・還付後、社員は、通知から2週間以内に還付充当金を保証協会に納付。

・弁済業務保証金を取り戻す場合は、保証協会公告

・公告する場合は、6ヶ月以上の一定の期間を定める。

「営業保証金制度」と似ているところがあるので、違いを要チェック

※営業保証金制度については→こちらの記事

 

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