事務所・案内所・広告・標識・従業者証明書・守秘義務など
宅建業者には、業務を行う上で守らなければならない、さまざまなルール(規制)があります。
この記事では、その中から、宅建業者が業務を行う、「事務所」や「案内所」などの、場所に関する規制について解説しています。
業務を行う場所
宅建業者が業務を行う場所には、大きく分けると「①事務所」の他にも、「②契約行為等を行う案内所等」や「③契約行為等を行わない案内所等」などがあります。
※「事務所」の定義についての記事は→宅建業法①「宅建業」「事務所」【宅建独学コース】
【宅建業者が業務を行う場所】
①事務所 | ・本店(主たる事務所)支店(従たる事務所)
・継続的に業務をおこなうことのできる施設で、契約締結権限を持つ使用人を置く場所 |
②契約行為等を行う案内所等 | 1,継続的に業務を行う場所で、事務所以外のもの
2,分譲を行う案内所 3,分譲の代理・媒介を行う案内所 4,展示会その他の催しをする場所 |
③契約行為等を行わない案内所等 | ・契約行為を行わない上記の1~4
・物件の所在地 |
※契約行為……契約の締結、申込みを受けること。
※使用人……支店長、営業所長など、営業に関して一定範囲の代理権を持つ者。
「案内所等」の届出
宅建業者は、「契約行為等を行う案内所等」を設置する場合、業務を開始する10日前までに、免許権者と案内所の所在地を管轄する都道県知事の両方に、案内所を設置した旨の届出を行わなければいけません。
(「契約行為等を行わない案内所等」には、設置の届出不要。)
【届出事項】
- 所在地
- 業務内容
- 業務期間
- 専任の宅建士の氏名
※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
この届出は、実際に案内所を設置した宅建業者が行います。
販売代理など、依頼したほうの宅建業者はこの届出義務はありません。
なお、免許権者が「国土交通大臣」の場合は、案内所の所在地を管轄する都道県知事を経由して届出を行います。
「専任の宅建士」の設置義務
「事務所」や「契約行為等を行う案内所」には、一定数の成年者である「専任の宅建士」を設置する義務があります。
※「成年者」…20歳以上、20歳未満で婚姻した者。
※「専任」…その事務所や案内所に常勤していること。
※【専任の宅建士】とは…事務所等に常勤し、専ら(もっぱら)宅建業に従事する者。
「専任の宅建士」の設置場所と設置人数
①事務所 | 業務に従事する者(従業員)の5人に1人以上の割合で設置 |
②一定の案内所・展示会場 | 従業者数にかかわらず1人以上設置(最低1人) |
※事務所の例……従業者が5人なら1人。6人~10人なら2人。
①の「事務所」の定義については→こちらの記事
②の「一定の案内所・展示場」とは、宅建業に関する契約を締結したり、契約の申し込みを受けることのできる場所(契約行為等を行う案内所等)、のことを指します。
たとえ臨時のテント張り案内所であっても、「契約の締結・申し込み」ができる場所には専門家(専任の宅建士)の設置が必要ということですね。
「専任の宅建士」の人数が不足した場合は、2周間以内に補充するなどの必要な措置をとらなくてはいけません。
これを怠った場合、指示処分だけでなく、業務停止処分や罰則の対象ともなります。
「標識」の掲示
「標識」を掲示する場所
宅建業者は、以下の場所には、その場所ごとに公衆の見やすい場所に、自己の「標識」を掲示しなければいけません。
- 事務所
- 案内所等
つまり、記事上記の「宅建業者が業務を行う場所」すべてで、「標識」の掲示が必要ということです。
※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
「標識」を掲示する者
基本的に、「標識」の設置義務があるのは、各施設を設置した宅建業者になります。
例外として、宅地・建物の販売、分譲を行う場合、「物件の所在地」(現地)では、販売業者(分譲業者)などの「売主」が標識の掲示義務を負います。
例えば…
宅建業者Aが、分譲マンションの販売代理を、宅建業者Bに依頼し、Bが分譲マンションの近く案内所を設置した場合。
「案内所」には、宅建業者Bに標識の設置義務があり、分譲マンションがある「現地」には、宅建業者Aに標識の設置義務があります。
「標識」の記載事項
標識には、以下の事項の記載が必要です。
- 「免許証番号」
- 「免許の有効期間」
- 「商号又は名称」
- 「代表者氏名」
- 「主たる事務所の所在地」
- 「専任の宅建士の氏名」(※契約行為等を行う場所のみ)
また、分譲の代理・媒介(仲介)を行う案内所等の標識の場合には、上記の記載事項に加えて、「売主の商号または名称」と「売主の免許証番号」の記載も必要です。
「事務所」に関する規定
宅建業において「事務所」とされる場所には、案内所等にはない、「事務所」だけに適用される規定があります。
「報酬額」の掲示
宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた「報酬額」の掲示が必要です。
「報酬額」についての記事→
「従業者名簿」の備え付け
宅建業者は、その事務所ごとに、「従業者名簿」を備え、一定の事項を記載しなければいけません。
また、取引の関係者からの請求があった場合は、この「従業者名簿」を閲覧に供しなければいけません。(見せないといけない義務)
【名簿の記載事項】
- 従業者の氏名・生年月日
- 主たる職務内容
- 宅建士であるか否かの別
- 当該事務所の従業者となった年月日
- 当該事務所の従業者でなくなった時は、その年月日
- 従業者証明書の番号
なお、この名簿は、最終の記載をした日から10年間保存する義務があります。
※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
「帳簿」の備え付け
宅建業者は、事務所ごとに、業務に関する「帳簿」を備え、宅建業に関して取引のあったつど、一定の事項を記載しなければいけません。
※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
【帳簿の記載事項】
- 取引の年月日
- 物件の所在・面積・概況(宅地の地目や建物の用途等)
- 取引態様(当事者・代理・媒介)の別
- 相手方または依頼者、代理人等の氏名・住所
- 取引に関与した他の宅建業者の商号又は名称
- 売買金額、交換物件の品目及び交換差金、賃料
- 報酬の額
- その他取引に関する特約、その他参考となる事項
また、宅建業者は、この「帳簿」を各事業年度末に閉鎖し、閉鎖後5年間保存しなければいけません。
なお、「宅建業者が自ら売主となる新築住宅に関する帳簿」については、閉鎖後10年間の保存義務があります。
※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
ちなみに、「帳簿」は従業者名簿と違って、閲覧に供する義務はありません。
「業務場所の規制」まとめ
・宅建業者が業務を行う場所は、大きく分けると3つ。
- 「事務所」
- 「契約行為等を行う案内所等」
- 「契約行為等を行わない案内所」
・宅建業者が業務を行う場所には、「届出」や「標識」などの規制がある。
設置の届出 | 専任の宅建士の設置 | 標識の設置 | |
①「事務所」 | 変更があった場合、30日以内に届出が必要 | 5人につき1人以上、必要 | 必要 |
②「契約行為等を行う案内所等」 | 設置10日前までに届出が必要 | 1人以上、必要 | 必要 |
③「契約行為等を行わない案内所等」 | 不要 | 不要 | 必要 |
・「事務所」のみに適用される規制がある。
- 報酬額の掲示
- 従業者名簿の備え付け
- 帳簿の備え付け
従業者名簿 | 最終の記載から10年間保存 | 閲覧義務あり |
帳簿 | 事業年度末で閉鎖後5年間保存(自ら売主の新築住宅は10年間) | 閲覧義務なし |
名刀5丁=名簿10年、5年帳簿、と覚えるといいかも。
・ほとんどが※この規定に違反した場合は、50万円以下の罰金に処せられます。
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